KOYO熱錬の人

技術者インタビュー

工場長 / 坂本 敏彦

会社での経歴とお仕事について教えてください。

入社30年になります。入社した頃、会社は建設機械や工作機械部品の熱処理加工をしていましたが、その頃から自動車のエンジンに使用される基幹部品の分野にも参入しました。私もこの分野の仕事をさせてもらいながら先輩からいろいろなことを学びました。炉に入れる前の部品の並べ方ひとつで仕上がりが変わること、最適な品質を得るための炉の温度や加熱時間、安定して高い品質にするための設備機器の使い方など、基礎的な技術からプロとしての考え方まで幅広く教わりました。失敗をするたびになぜそうなるのかを教えてもらううちに、得意先の要求に応えるためにはどうすればよいかを自分で考えて実現できるようになりました。

そしてISOなどの認証取得にも関わることができ、現在では航空機メーカーの仕事も任されるようになりました。この分野の仕事では加工した部品の品質は当然のこと、その品質を維持するための管理体制など、一段と厳しい要求をされるようになりました。このような要求に応える高い技術や知識を身につけることができたのも、若い時からいろいろな経験をするなかで、先輩から熱いご指導をいただいたおかげだと思います。

どのような時にやりがいを感じますか。

自動車や飛行機などの中核部品を扱うということは人の安全にかかわる重要な仕事です。
小さな部品ひとつを熱処理するのにもいろいろなことに気を配る必要がありますし、管理すべき内容も多岐にわたります。世界レベルのトップメーカーに採用される技術をもつKOYO熱錬は、海外企業から受注をするなどお客様もグローバル化しています。世界に認められる会社で、熱処理加工のプロフェショナルでありスペシャリストであるという誇りをもって仕事に取り組めることが私のやりがいとなっています。

社内教育の特徴や若手を育てるために心がけていらっしゃることは何ですか。

社員教育というわけではありませんが、KOYOでは社員全員で毎日清掃を行っています。きれいで整理・整頓が行き届いた職場環境を自らが作ることで、職人的な精神の基礎を身につけることができると考えています。新しい設備や機械を導入して、いくら品質の良いものが作れるようになるからといって、それを使う人間がとことんまで品質にこだわらなければ、不良品なしで精度の高い製品をお客様に納品することはできません。きれいな職場は社員の精神性の現れであり、その環境で製品が作られるから品質の高さを維持できると思います。

熱処理作業そのものは現場で行われますが、その作業の裏付けとなる理論を習得することが大切です。例えば、「こういう時にはこうしなさい」と先輩から教わったとしましょう。そのやり方は何度か経験することで身につきます。一方、そういった技術やノウハウがその作業工程においてどのような意味を持ち、どういった効果があるかを知ることが大切です。昔から技術者や職人の世界では『見て覚えろ』とか『技は盗むものだ』と言われてきました。自分が教える立場になってわかるのですが、実際、自分の技術を言葉にして後輩に伝えることは本当に難しいと感じます。しかし、会社である以上、社員の技術レベルを高めるために高度な技術やノウハウを伝えることが必要となってきます。定期的に勉強会を催し、学びの場を提供することもそのひとつです。

また、最近では京都の国立大学との共同研究を始めました。それは『暗黙知』を定量的にとらえ記号化や言語化する研究です。どういうことかといいますと、熟練の職人にその技がなぜできるかを聞いても、本人が言葉で表現して他人に伝えることはとても難しいことです。そのような知識やノウハウは『暗黙知』と言われます。私たちが研究しようとしているのは、『暗黙知』といわれる言葉にできないような高いレベルの技術やノウハウを数値のような測ることのできるものに置き換えようとする試みです。個人の高度なノウハウが『見える化』できるようになれば、会社全体の技術レベルの向上に貢献でき、それが企業の発展につながります。

いま、工場長として私が一番うれしいのは、経験を積んだ熟練者の技術や知識が若い後輩たちに伝わり、育っていると感じるときです。KOYOではすべての社員が厚生労働省の「熱処理技能検定」の技能士資格をもっていますが、その資格をもっていることに満足せず、さらに上級の資格を目指いて欲しい、そのために私も後輩たちと共に学び、育っていきたいと思います。

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